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バリュー平均法はドル・コスト平均法よりも有利な投資法?

      2014/12/25

バリュー平均法のイメージ

確定拠出年金を利用した運用方法について書かれた書籍「自分でやさしく殖やせる 確定拠出年金最良の運用術」に、「バリュー平均法」という聞きなれない運用手法が載っていました。

銀行や証券会社のウェブサイト、そして書籍でよく目にするのは「ドル・コスト平均法」です。

こちらは、定期的に定額を投資しつづけるというもの。投資対象の価格が安ければ多く購入し、高ければ少なく購入することで、平均購入単価を低くする効果を狙います。

それに対してバリュー平均法は、価格が安いときにはより多く購入し、価格が高いときにはより少なく購入し、ときには売却もまじえて平均購入単価をより低くしようという運用手法です。

積立投資といえばドル・コスト平均法という風潮がありますが、バリュー平均法をつかうことでより効率的な運用ができるかもしれないというのなら、とても気になるところですよね。

バリュー平均法とはいったい、具体的にどういう手法なのか。以下に、サラッと説明します。

バリュー平均法ってどんな手法?

バリュー平均法とは、上記の書籍を引用すれば、「時価残高があらかじめ定めた金額になるように定期的に資金を投入していく」という積立投資の手法です(p185)。

この「あらかじめ定めた金額」のことを「バリュー経路」(バリュー・パス)といいます。

株式や投信には値動きがあり、購入したときと現在の評価額が異なることが大半だと思います。バリュー平均法は、積立するタイミングごとに目標金額を定め、評価額がその目標金額と同じになるように追加投資します。

※ 書籍では3ヶ月ごとが推奨されています。

たとえば、初回の積立時の目標金額を10万円、2回目の目標金額を20万円に定めたとします。最初に10万円で購入した投信が値下がりして、2回目の購入時には評価額が8万円になっていました。

このとき、ドル・コスト平均法ならば前回と同じく10万円を積み立てるところですが、バリュー平均法では、評価額があらかじめ定めた20万円になるように、12万円を追加投資します。

反対に、もし14万円に値上がりしていた場合は、追加投資額は6万円です。また、運良く21万円になっていた場合は追加投資はせず、1万円分を売却して目標金額の20万円になるようにします。

このように評価額と目標金額との差額を追加投資、もしくは売却することにより、ドル・コスト平均法よりも有利な状態をつくることができます。

本当にドル・コスト平均法よりも有利?

ドル・コスト平均法は、1本調子の相場には弱いですが、ある程度の上下変動がある相場では、平均購入単価が低くなる効果を期待できます。

バリュー平均法は、その効果を増幅させます。冒頭で紹介した書籍によれば、多くの相場のパターンで、バリュー平均法の平均購入単価のほうが低くなるという検証結果がでているようです。

多くの相場のパターンというのは、「横ばい」「上昇」「下落」という3つのトレンドで、それぞれ上昇・下落・上昇、下落・上昇・下落、1本調子という3つの値動きのケースを想定した9つのパターンです。

この9つのパターンのなかで、「1本調子の横ばい」を除いた8つのパターンでバリュー平均法のほうが有利だった、というように書籍には書かれています。

また別の例として、世界中のマーケットを総合した株価指数である「MSCI ACWI」へ投資したケースが紹介されています。

それによれば、1989年から2013年12月まで、3ヶ月ごとに9万円ずつバリュー経路を増加させながら積立投資した場合、時価残高が873万円、売却して得た準備金が989万円になるとのことです。

投資したお金をすべて回収して、平均購入単価がマイナスになった状態です。これは運が良すぎるケースだと思いますし、過去の結果が将来も繰り返されるとはかぎりません。しかし、強烈な検証結果だと思いませんか。

以下に、バリュー平均法を独自に検証した方のブログ記事を掲載します。書籍の情報だけでは信じきれないという場合に、読んでみてください。

参考 : バリュー平均法について、独自にシミュレーションして分かったこと。

バリュー平均法のデメリット

バリュー平均法には欠点もあります。それは、投資対象の価格が下がり続けた場合に、資金が枯渇してしまうということです。

バリュー平均法では、積立時の追加投資額は、投資対象の価格が値下がりすればするほどたくさん必要になります。たとえばバリュー経路を20万円に設定していた場合、評価額が10万円なら追加投資額は10万円、5万円なら15万円が必要です。

期待リターンがプラスの金融商品に投資する場合、何十年という長期スパンで下がり続けることはまずあり得ないことです。しかし、短期間ならば十分に起こることも考えられます。

運悪く1年以上も続く下降トレンドに出合ってしまった場合、バリュー経路どおりに追加投資できないということが起こる可能性があります。そうなれば想定どおりの効果は発揮されません。

この点について書籍では、追加投資額の上限を決めておくという対策が紹介されています。ただ、そもそも追加投資額を用意できるように計画しておく必要はありますので、この運用手法をはじめる前にある程度キャッシュを貯めておかなければいけません。

また、1本調子で上昇するシーンでは、ドル・コスト平均法よりも投資金額が小さくなることがあります。その結果、平均購入単価は低くても、利益は小さくなってしまうということが起こります。

これは平均購入単価を低くする効果を得るためには仕方のないことですが、そういったデメリットがあることを事前に知っておく必要はあります。万能な運用手法はありません。

積立投資に使えるのか?使えないのか?

バリュー平均法は、きちんと実践できればドル・コスト平均法よりも平均購入単価を低くできる効果があります。しかし、「きちんと実践する」ことが難しい相場に出合う可能性は十分にあります。

もともとある程度のキャッシュを用意しておく必要があること、追加投資額に上限を設定したときに想定どおりの効果を得られないことなどを考えると、実際に積立投資に使うのはすこし難しいかもしれません。

しかし、追加投資額に上限をもうけつつも相場にあわせて積立していくことで、ドル・コスト平均法よりも高い効果を発揮する可能性はあります。やや上級者向けの運用手法なのでしょう。

個人的には試してみたいと考えています。もし実践する場合には、もちろんこのブログで経過を書いていきます。

 -資産運用

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