コロワイドによるカッパ・クリエイトに対する公開買付(TOB)情報まとめ
株式会社コロワイド(7616)による「カッパ・クリエイトホールディングス株式会社(7421)」に対する公開買付(TOB)が発表されました。これによりカッパ・クリエイトは、コロワイドの連結子会社になります。
参考 : コロワイドが「かっぱ寿司」のTOB発表、傘下に マック抜き外食3位に急浮上
コロワイドは外食大手で、手作り居酒屋「甘太郎」、北の味紀行と地酒「北海道」、ゆであげパスタとピザ「ラ・パウザ」、うまいものいっぱい「いろはにほへと」、うまいもん酒場「えこひいき」などを展開しています。
2社の売上高の単純合計は2300億円以上で、1位ゼンショーホールディングスの5,250億円、2位すかいらーくの3,378億円に次ぐ、外食3位になります。
コロワイドは今回のTOB目的で設立した100%子会社の「株式会社SPCカッパ」を通じて、公開買付をおこないます。最大およそ159億円の第三者割当増資の引受けも決めており、必要な資金は最大およそ305億円とのこと。
みずほ銀行から300億円を限度とした融資の約束を取りつけており、手元資金5億円とあわせてTOBと第三者割当増資の引受けにのぞむ予定。
公開買付(TOB)の詳細
今回のコロワイドによるカッパ・クリエイトホールディングス株の公開買付について、期間・価格・株数などの詳細は以下のとおりです。
- 期間
- 2014年10月28日(火)から11月27日(木)まで
- 価格
- 普通株式 : 1,048円
- 株数
- 予定数 : 17,816,100株/下限 : 13,199,999/上限 : 17,816,100株
- 代金
- 186億7100万円
- 決済日
- 12月4日(木)
- 代理人
- 大和証券
今回のTOBが成功すれば、コロワイドの保有する株数の割合は50.50%になります。上限を超えた分はその全部もしくは一部の買付はおこなわれず、その場合はあん分比例方式によって買付されるとのこと。
公開買付代理人は大和証券なので、TOBに応募する場合は大和証券の口座への株式移管が必要です。もし未開設の場合はまず口座開設をして、そのあとに現在あずけている証券会社の口座から移管することになります。
参考 : 公開買付(TOB)の応募方法を解説 | 他社移管と信託銀行からの振替え
ただ、今回のケースは筆頭株主の株式会社神明ホールディングの保有する株数が下限として設定されており、またすでに同社が応募するという契約を結んでいます。買付価格も低く、株価は発表後に下落しています。
上場は維持される予定であり、特に売却やTOB応募をおこなう必要はないかもしれません。投資判断は自己責任でおこないましょう。
TOBの目的と背景
今回のTOBについてのコロワイドの説明のなかで気になったのが「業態ポートフォリオ」という言葉です。
投資家としてはポートフォリオという言葉は聞き慣れたものですが、ビジネスの場においてもそういった使い方をするのだということがわかってひとつ賢くなったような気分です。以下、コロワイドによる説明です。
また、中期戦略においては、戦略的な業態ポートフォリオの再構築を掲げ、中核20業態への集約や市場環境の変化への対応としてレストラン業態の売上構成を高めるべく、業態ポートフォリオのリ・バランスを進めております。
出典 : 連結子会社(株式会社SPCカッパ)による「カッパ・クリエイトホールディングス株式会社株式(証券コード:7421)に対する公開買付けの開始及び第三者割当増資の引受け」に関するお知らせ
業態ポートフォリオとは何なのか?なんとなく察しはつくものの、詳細が知りたくなったので調べてみました。
業態ポートフォリオとは
「業態ポートフォリオ」でGoogleで検索してもあまりヒットせず、満足のいく結果を得られなかったので、つぎに「事業ポートフォリオ」で検索しました。すると、それらしいページがいくつかでてきました。
それらをザッとめくって調べたところによれば事業ポートフォリオとは、資産運用と同じように、事業の組合せ、いくつかの種類の事業を運用するという意味のようでした。
安全性や収益性、成長性などの異なる複数のビジネス(事業)を経営することで、リスク分散をはかろうということです。資産運用における分散投資と同じような考え方ですね。
ビジネスには成長期もあれば、成熟期や後退期もあります。それらのスパンや現在のステージがちがうものを組み合わせれば、どれかが悪くなってもほかでカバーできる、ということです。
収益性やターゲットについても同じです。新聞や会員サービスなどの継続課金ビジネスと、単発の売上を積み重ねるスーパーなどの小売は、まったく別物です。またメインターゲットの顧客も違うはずです。
そういったバラバラのビジネスを複数もつことでリスク分散ができるというのが、コロワイドのいう「業態ポートフォリオ」なのだと思います。
コロワイドはリスク分散できているのか
しかし、以下のコロワイドの説明を読むとちょっとした疑問が生じます。
特に、レストラン業態の売上高比率の6割以上への向上という目標が、本取引により達成できる見通しとなりました。(中略)当社グループにおける「肉」と「鮮魚」の食材比率が適切なバランスとなり、一層の経営基盤の安定化に資する事が期待されます。
コロワイドのビジネスはもともと居酒屋が中心でしたが、最近はレストラン業態を強化しているとのこと。今回のTOBで、レストラン業態のなかで偏りがあった食材比率の割合が改善されたという主張です。
業態ポートフォリオがリスク分散をはかろうとするものならば、レストラン業態への6割もの集中はむしろリスクを高める経営判断といえると思います。
今後は居酒屋事業よりもレストラン事業のほうが見込みがあるから、よりそちらに注力するというようにとらえられないでしょうか。
つまり分散するというよりも、むしろ集中するという言い方のほうがしっくりくるような気がします。業態を転換するというほうがより適切です。リバランスという表現にもすこし違和感をおぼえます。
事業ポートフォリオの考えでは、いかにムダなく経営資源を配分するかがカギのようです。手を広げすぎれば個々のビジネスは弱くなるし、極度に狭めればリスク分散はできません。
そういう視点でとらえると、コロワイドの経営陣はレストラン事業へ経営資源を集中して、リスク分散ではなく集中投資をおこなっているように見えます。つまり今回のTOBで、リスクは高まったのではないでしょうか。
※ リスクが高まったので今回の経営判断は間違っていると断じているわけではありません。それと今後のビジネス運用とは別の話です。
カッパ・クリエイトHD株に対するTOBのまとめ
公開買付価格が1,048円であり、発表の前営業日の終値1,107円よりも低かったこと、またTOB期待で直前に上げていたことから株価はその後、下落しています。30日の終値は1,027円です。
今回のTOBにより、コロワイドとカッパ・クリエイトの売上高の単純合計は2300億円以上となる予定でしたが、10月10日に下方修正したカッパ・クリエイトにつづき、コロワイドも29日に通期業績予想を下方修正しています。
参考 : 業績予想の修正に関するお知らせ
理由としては居酒屋市場の縮小、競争激化、新規出店が計画の半分に達していないこと、閉鎖店舗が計画以上にふくらんだことなどをあげています。
2015年3月期の予想売上高は、今回のTOBによりカッパ・クリエイトを連結子会社化したことも織り込んだ数字として、およそ1781億円としています。
すでに下半期にはいっており通期で寄与するのは来年からですが、はたしてどれほどの売上高、利益の向上を期待できるのか。株主は、2016年3月期の業績予想がでるまでは、とりあえず様子見というところなのでしょうか。
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