ストラテジック・バリュー・オープン(真価論)の残高は4500億円!?
日経新聞のスクランブルというコーナーに「頼りない日本株投信 相場の波乱止められず」という記事が掲載されていました。そのなかに不思議な投資信託があったので紹介します。
ストラテジック・バリュー・オープン(真価論)とは
日経新聞で紹介されていたそのファンドの名前は「ストラテジック・バリュー・オープン」(愛称 : 真価論)。
2000年7月に設定されたアクティブファンドで、驚くことに設定以来、たったの1度しか年間パフォーマンスでTOPIXに負けたことがないそうなのです。
まだ14年しか経っていないと思うことなかれ。ベンチマークに勝ち続けるアクティブファンドは、負けてしまうファンドにくらべて非常に少ないという分析結果があることを考えると、これはスゴイことなのです。
ファンドの基本情報
ストラテジック・バリュー・オープンは「ファミリーファンド方式」で運用される投信です。
ファミリーファンド方式とは、株式や債券などへの実質的な投資をおこなう「マザーファンド」と、そのマザーファンドへの投資を通じて間接的に株式や債券への投資をおこなう「ベビーファンド」とが組み合わせておこなわれる運用形態です。
複数のベビーファンドがひとつのマザーファンドを通じて投資をおこなうことで、マザーファンドの運用規模が大きくなり、運用の効率化がはかられるというメリットがあります。
似たような形態に「ファンド・オブ・ファンズ」があります。どちらもファンドへ投資するファンドという点では同じです。
しかし、ファミリーファンド方式の場合は同じ運用会社のファンド同士であり、マザーファンドでは信託報酬が発生しないのに対して、別の運用会社のファンドで構成されるファンド・オブ・ファンズでは2重に信託報酬がかかります。
- ファンドの概要
- 国内株式のなかから、資産や利益にくらべて株価が割安であると判断され、株価の上昇が期待される銘柄を厳選。銘柄選別のアプローチでは「割安性評価」と「実力評価」を組み合わせる。
- 信託報酬
- 1.62%/年(税込)
- 販売手数料
- 3.24%以内(販売会社による)
- 信託財産留保額
- 0.3%
- 解約手数料
- 無料
- 分配金
- 年1回/50~450円(実績)
こうして基本情報を見ると、手数料が高く感じますね。ふだん見慣れているインデックスファンドと比較してしまうからかもしれませんが、信託報酬1.62%というのは大きいです。
この手数料率で運用しながらも、10数年で1度しかTOPIXに負けていないというのはやはり驚きです。
純資産残高は4500億円以上!?
日経新聞の記事を読んでなにが不思議だったのかというと、ストラテジック・バリュー・オープンの純資産残高についてです。
2014年9月30日現在の月次レポートを読むと、純資産残高は9.3億円と記載されています。しかしこのファンド、ある投資家層の購入金額も含めると、その残高は4500億円に達するというのです。
今では一般の個人も買える公募投信としても欧州、アジア、南米の17カ国で販売しており、海外投資家分の残高は約4500億円に達する。単一の戦略の日本株ファンドの規模としては、世界最大級だろう。
出典 : 頼りない日本株投信 相場の波乱止められず(日本経済新聞)
記事によると、類似ファンドの残高をあわせても国内市場では60億円にすぎないが、海外での販売分は4500億円を超えるとのことなのです。これはスゴイ数字です。
投信の情報満載のウェブサイト「モーニングスター」で純資産残高のランキングをみると、10月24日現在の1位は「日経225連動型上場投資信託」で1兆9846億円です。
5位の「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」で1兆2581億円。20位の「アジア・オセアニア好配当成長株オープン(毎月分配型)」で5236億円ですが、これは全4055本のファンドのランキングです。
その20位にそれほど水をあけられない程度の水準にあるのだから、スゴイの一言です。
ただ、日経の記者が書いているのだから間違いはないのだと思いますが、情報源(ソース)は確認できませんでした。いろいろ単語の組合せをかえて検索してもヒットせず。
外国籍だったり、別のファンド名での販売だったりするのでしょうか。どなたか、もし海外投資家向けの販売情報や実績などをご存知の方がいらしたら教えていただけると嬉しいです。
ストラテジック・バリュー・オープンの今後
国内市場での人気は皆無といってさしつかえないほど低い純資産残高であり、この水準の残高だと運用が続くのも今後あやしくなってくるのではないか、との疑念が頭をよぎります。
しかし、海外投資家分の残高が実際に4500億円もあるのであれば、その心配は杞憂です。アクティブファンドが市場平均に勝ち続けることはむずかしいと思いますが、ぜひがんばってほしいですね。
関連記事
-
毎月分配型のインフラ関連株投信がうりふたつ?
少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)をおもに利用しているのは60歳代以上の高齢者です。その割
-
値動きの大きい「レバレッジ型ETF」と「インバース型ETF」の活用法と注意点
ハイリスク・ハイリターンの金融商品に投資したい。現物取引だけでは得られない大きなリターンを得たいけど
-
投信の「特別分配金」とは?普通分配金との違いと税金について
職業柄、資産運用について高齢者の方とお話しすることが多くあります。 ぼくの主観なので偏りはありますが
-
野村ターゲットプライス「日経225」(愛称 : タッチ&スイッチ)の商品性
出典 : 野村證券の公式サイト 先日「野村時間分散投資『日経225・国内債券』」(限定追加型)という
-
投資成績への影響大!タイミング投資の売り時と買い時
以前、セゾン投信と日本郵便の資本提携について書きましたが、そのセゾン投信の中野晴啓社長の新しい著書「
-
野村證券の「Nomura Fund 21」2014年10~11月号を読んだ
野村證券のだしている投資信託情報誌「Nomura Fund 21」があります。10月発行の2014年
-
低コストのファンドを運用する「直販投信」会社まとめ
「直販投信」という言葉があります。これは、直販投信会社(運用会社)、もしくはその会社が運用するファン
-
野村時間分散投資「日経225・国内債券」は長期投資向けではない
出典 : 野村證券の公式サイト 野村グループが設定・運用する新しいファンドが11月に販売開始されたよ
-
日本で買えるバンガードETFとインデックスファンドまとめ
米国バンガード社の運用ファンドのなかで、日本国内で買えるものをまとめました。バンガードのETF、イン
-
分配金を含めた「通算損益」と「グラフ付き運用報告書」でわかりやすくなるか?改正投信法
日経新聞に気になる記事がでていました。12月1日に施行される「改正投資信託法」についての記事です。