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野村時間分散投資「日経225・国内債券」は長期投資向けではない

   

野村時間分散投資のイメージ
出典 : 野村證券の公式サイト

野村グループが設定・運用する新しいファンドが11月に販売開始されたようですので、紹介します。

今回、設定された「野村時間分散投資『日経225・国内債券』」(限定追加型)は、当初は国内債券だけに投資し、その後だんだんと株式に資金をシフトしていき、最終的に株式だけで運用するという変わったファンドです。

参考 : 野村時間分散投資「日経225・国内債券」(限定追加型)

委託会社(運用会社)は「野村アセットマネジメント」、受託会社(信託銀行)は「野村信託銀行」、販売会社は「野村證券」「野村N&C」と、完全に野村グループの商品です。

ファンド名にも含まれている「時間分散投資」は、どうやらドル・コスト平均法のことを言っているようです。具体的には、どういう仕組みなのでしょうか。

ファンドの概要

「野村時間分散投資 日経225・国内債券」の商品構成はシンプルです。投資対象は国内株式と国内債券の 2つで、それらをマザーファンドを通じて購入するファミリーファンド方式を採用しています。

具体的には、株式部分は「野村日経225 マザーファンド」、債券部分は「国内債券NOMURA-BPI総合 マザーファンド」へ投資をおこないます。

2つのマザーファンドはそれぞれ、日経平均株価とNOMURA-BPI総合(国内債券市場全体)に連動するように運用されるインデックスファンドです。

この商品構成だけを見れば、国内株式と国内債券の 2つの資産クラスへ分散投資するもののように見えます。商品の中身を単純に解釈すると、いたってシンプルと言って良いと思います。

ファンドの手数料等

購入手数料
1.08%(税込)
信託報酬
0.54%/年(税込)
信託財産留保額
0.1%
設定日
2014年11月21日
信託期間
2020年12月18日まで

ファンド内部でドル・コスト平均法を活用?

商品説明資料を読むと、すこし変わった運用方法がおこなわれることがわかります。その内容を要約すると以下のとおりです。

  • 2014年末までは国内債券だけに投資する
  • 2015年から 2017年までの 3年間に、資金をだんだん国内株式へシフトする
  • 2018年以降は株式だけで運用する

※ 厳密には「原則として」株式や債券のみで運用される期間があるとのことで、場合によっては違うアセットアロケーションになる可能性も示唆されています。

「限定追加型」ということで、このファンドを購入できるのは 2014年12月24日までです。その購入申込期間がおわったあと、2015年以降に、少しずつリスク資産である株式に資金を移行していくようです。

より詳しく説明すると、3年間のあいだに毎月、国内債券に投資している金額のうち残りの月数で割った金額相当分を、株式へ投資するという運用方法です。

たとえば、2015年1月はその月を含めて残りの月数が 36ヶ月あります。そこで、国内債券への投資額(この時点では信託財産のほぼ全額)を 36 で割った金額、つまり 36分の1 の金額を株式の買付けにまわすということです。

2015年2月は残りの月数が 35 なので、35分の1 を株式へ、3月は 34分の1 を、翌月はさらに 33分の1 を…というように、3年後の2017年12月の買付けで完全に株式に資金シフトできるように、毎月うつしていくわけです。

「野村時間分散投資 日経225・国内債券」の愛称は「地道にコツコツ」だそうです。なぜ地道にコツコツなのかというと、上記のようにファンド内部で「ドル・コスト平均法」を活用するから、という理由なのでしょう。

今年のNISA枠を使ってほしいから

上記の説明を読んで、なぜファンドを購入して運用管理費用(信託報酬)を支払って、他人にドル・コスト平均法をしてもらわなければいけないのだろう? と思いませんでしたか。ぼくは思いました。

商品構成もいたってシンプルで、より信託報酬の低いほかのインデックスファンドやETF、もしくは個別銘柄や個人向け国債等で代用できるのではないか。あえてこのファンドを購入する理由はないのではないか。

そのように思いましたが、それは当然のことです。

野村證券の狙いは、まだ使われていない今年のNISA枠であり、まずはそれをいっぺんに投資してもらい、あとはこちらで時間分散投資しますよ、というのがこの「地道にコツコツ」というファンドの正体なのです。

ただ、誰でもわかるように、「地道にコツコツ」には以下のような欠点があります。

  • ドル・コスト平均法は、誰でも自分で低コストでおこなえる
  • 国際分散されていないので、国内株式市場の動向に大きく影響を受ける
  • 最終的に株式クラスひとつになり、分散投資にならない
  • 信託期間がおよそ 5年間と短く、長期投資向けではない

上記はあくまで長期投資という観点での欠点ですが、個人的にはあまり良質なファンドとは思えません。

「今年のNISAは、今年だけ。」というコピーは別に構いませんが、それにとらわれて近視眼的な、まるでテーマ型のような単発ファンドをだすのは、褒められる姿勢ではないのではないでしょうか。

商品説明資料には 2020年の東京五輪開催と、過去のオリンピック開催決定から株価指数がピークをつけるまでの期間についての説明などがあります。

それを意識したテーマ型のようなファンド、というのはあながちハズレではないように感じます。うがった見方をしすぎでしょうか。

地道にコツコツのようなファンドを設定するなら、国際分散投資やドル・コスト平均法の有用性を投資家に説き、それに適したファンドを用意するほうが、長期的に見ておたがいの利益になると思います。

野村證券も時代に流れにしたがって、投信などによるストック収入を得ようとする動きに変わってきましたが、まだまだ情報を持たない投資家への良質とはいえないファンドの販売というビジネス形態からは脱却しないようです。

 -投資信託

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